【第1回】ゆきこさん「“自分はこうしたい”って、強く再確認できる場所」



森のこども園にこどもたちと来ているお母さんたち、あるいはかつて来ていた方に、
子育てや生活についてお話を伺います。
12月4日(日)のオープンデイでは、囲炉裏を囲んでもっとお話しできますよ。


【第1回】

ゆきこさん(30代)

  「“自分はこうしたい”って、強く再確認できる場所」  

5歳と7歳のふたりのお子さんを育てながら、ピアノの先生をされています。
森のこども園に来ていた年数は6年。“おんがく部”を設けて、歌や笛の指導をしてくださったこともあります。今年はお仕事と幼稚園の役職のため、こども園の活動を休まれていますが、音楽性が必要な時にはプロフェッショナルとしてみんなに頼られ、エネルギッシュで明朗なお人柄で親しまれています。個人的にはご両親との円満な同居の秘訣を探りたいところです。


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す:聞き手の鈴木
ゆ:ゆきこさん

す「活動に加わることになったきっかけを教えてください」
 ゆ「結婚する前から、こどもにたずさわる仕事のためか、『クーヨン』とかをよく読んでいて・・・“シュタイナー教育”も出てきて、興味をもっていました。
近所で友達になったママが森のこども園のことを教えてくれて。『こんなのがあるらしいよ~一緒に行ってみようよ!』って。上の子が1歳の春からですね。大きい子組・小さい子組って分かれていた時で、そのころは月1とかで。」

DSCF6981.JPGす「すごく大人数になっていた年ですね」
ゆ「そうそう!いろんな繋がりがあって。母が“おはなしの会”をしてて、『おはなしの会の方でこういうのをやってる方がいるらしいのよー』って。たまたま行ってみたら森ののりちぇる(代表の藤井徳子)っていう人と、おはなしの会ののりこさんて人が重なって。縁だなーって思って



1年目は・・・月1回か2回?なうえに、こどもがまだ1歳だから、体調が悪いと月1回行けるか行けないか。でもやっぱり行って帰ってくると歩けるようになってたり、動けるようになってたり。一緒に手をつないで歩いたりしただけで・・・帰るとこう、“生きてる”って感じになっていて。」
す「日々の成長がみえる感じだったんですね。お互い長く活動をしてますが、『この活動が印象的』というのはありますか?

ゆ「みんな一緒に散歩しながら・・・自分のこどもよりちょっと大きくなった子をみて、“あ!歩きながらおしっこできるんだ。”とか、“あ!こんな実を見つけるんだ。”とかを見せてもらって。自分のこどもがそういうことができるようになった時に、あー、成長してるなっ!て感じた。散歩の時間が、すごい良かったかも。



IMG_7873.jpgゆ「あとはおいしいものを食べて、おしゃべりをしてね。食べ物を大事にしていること、それぞれはもちろん違うけど・・・」
す「森に来てなかったら、Sさんのマクロビオティックの世界とか全然遠かったですよね。」
ゆ「そうなの!!それが良いとか悪いとかじゃなくて、たとえばマイノリティというか、全部こうするのが当たり前っていう、食べ物以外でもいろいろあると思うんだけど、主流じゃないものを自分が選んだ時にも、“こどもにこういう風に伝えると、こどもってこう受け入れてくれるんだ”とか、“受け入れないものがあっても、ぶれないものがあってもいいんだ”とか、すごく近くで見せてもらえたから。

なんとなく過ごしていると、おたより配られて『これもってくる』『こういう風になりました』ってなって、“え?なんでこうなってるんだろ?”って考えないで・・・結局違和感持ってしまうことがあるけど、そういう時にちゃんとよく考えたいなと思って、するようになったかなぁ・・・。」

rps20140228_213854_809.jpgす「へー、ゆきこさんて割りとはじめから自分の目線ができているというイメージだったんですけど、そんなことはなかったんですね。」
ゆ「うーんん、ブレブレ(笑)ふふふ。
自分でこうしたいなとか『クーヨン』を読んでこういう世界があるんだなって知ってても、実際ピアノ教室にくる生徒さんや親御さんはそうじゃないこともある。だけど自分と考えが違うから全部それは間違ってるとか、受け入れたくないっていう風にしちゃうと、うまく付き合っていけなかったり信頼関係を築けなかったりするから、どういうものでも大丈夫なんだって受け入れつつ。逆に、ピアノ教室の仕事が、自分はここだけは譲りたくないなっていうのをすごい発見する時間。

でも森にあまりきていないと、そこがちょっと自分の中で迷いが生まれそうなところを、森にくるとストンって、やっぱり自分はこうしたいって強く再確認できる場所かなって。」




す「こどもの頃はアウトドア派でしたか?どんな遊びをされていましたか」
ゆ「北海道だったから、家の周りがもう自然で、草木使って遊んだりおままごとだったりは身近だった。ただ、そこに親がいたかっていうと、わからないけど。
でもサンクチュアリっていう・・ウトナイ湖っていう湖があって、その周りにバード保護センターがあって、そこにひまわりの種とかを持っていって巣に入れて観察できる、湿地の保全をしている場所に、自転車で週末行ったり。あと、こども劇場にも参加していたから、みんなでバーベキューしたりキャンプしたり。でも今のこども園のように定期的ではなかったから、今はすごく恵まれていると思う。」

す「ゆきこさんは、伝説の園長藤井さんに劣らないほど目標に向かってまい進するパワーが強く、ご多忙でいらっしゃいますが、日々の行動の中で切りかえをするコツってありますか?息抜き方法とか。やらなきゃいけないことにパッと動けているイメージですが」
ゆ「あー、、、切りかえ・・・。」
す「ダラダラしてない感じですよね」
ゆ「し て ま す わ~~」
す「えー?本当に?」
ゆ「してるしてる~。だからま、忙しい時とそうじゃない時は、メリハリは。ダラダラできる時はダラダラする。でも、仕事の時間はこどもが居られない状況がほとんどだから、子育ての時間が息抜きになっているかな。本当は、べったりしていたい時期なんだけど。だけど逆に、仕事しているから、こどもが居る時にイライラしない部分があるのかなぁと思う。」
す「ありがたみがすごく感じられるんですね・・・」
ゆ「それでもイライラしちゃう時も、あるんですが・・・(笑)夜寝る前に絵本を読む時も・・・、私がイライラしていると、『きょうは・・・えほんよまないよね・・・』ってこどもに言わせてしまうんだよね。“あーわたしイライラしてるんだ。”ってのを、そこでちょっと反省し(笑)『よむよむ!なによむっ?!』って。反省しつつ、です
あとは、森で採ってきた木の実とかいろんなものを見たり、フェルトを触ったりっていう時間もいいし。」



す「忙しい中・・・ということにまた重なりますが、家事はどうさばかれていますか?マイルールがあったら教えてください」
ゆ「もーめっちゃ手抜きだからさ~触れてほしくないところだけど、、ハハハハ!

だけど最近は、自分が使った時に、かな。自分がトイレ入る時に、掃除しちゃうとか、お風呂掃除とかも、なるべく家族の最後につかって、そのまま掃除しちゃう。階段下りてきながら、階段拭いちゃう。」

す「おー、すごい!流れに乗って、ですね」
ゆ「そうそうそう(笑)そこで、全部できてなくても、もうそこで、今日階段できたから!OK!って。ハハハ」
す「自分に、OKを。」

ゆ「自分に、ゆるく。家族にやってくれる分に、もうめちゃくちゃ、感謝を。こどもが休みの朝、こどもがご飯を作ってくれて。『すごい助かる~!』って、本当に心からの声だけど。」


す「私はゆきこさんに森で、いろんな健康法を教えてもらったのが印象深くて。中耳炎にはしょうがのしぼり汁とごま油とか、こんにゃく湿布とか、集中力を使いたい発表会の日は腰回りにひもを巻いていくとか。そういう最近のおすすめはありますか?」

ビワの葉湿布.pngゆ「最近病気で寝込んで、必要な時は病院へ行くんだけど、いつも飲みなれていない薬だとその後めまいが続くこともあって、その時はビワの葉湿布。こんにゃくを茹でて、タオルに包んで、ビワの葉っぱを置いて、首の後ろに置くと、すごい楽になって。首とか腰とか、お腹とかにいいみたい。
あと、布ナプキンを生理じゃない時にも使うようにしたら、冷え性がちょっと楽な気が。靴下は家では重ねて履けても、中々出かける時は履けないこともあるから。」
す「わたしも今3枚履いてるけど、結構靴がキツキツで、靴が合わない時もあって」
ゆ「長靴履くときは大丈夫なんだけどね。布ナプキンと、ホッカイロを貼って、冷えを防ぐといいって、助産師さんに教えてもらって。ホッカイロはちょっとお金かかるし熱すぎてもなと思って使ってないんだけど、布ナプキン2枚とか使ってみてる。」
す「ここからも冷えるんですね。お腹とかは気にしてけっこう厚着してるけど。」
ゆ「これだけで結構楽になる気がしてる」


IMG_5204.jpgす「最近ひとに言われた・あるいは言えた、嬉しい一言を教えてください。」
ゆ「あーーー。そういうつもりでしているわけじゃ、ないんだけど・・・友達にさ、その、『愛にあふれてる!』って、言われたの。
本当言うと自分の仕事を・・・大事にしちゃってるし、こどものこと思ったら今仕事って、ちょっと手放さなければいけない時かもしれないのに。家族やまわりの友達や・・・幼稚園の先生や森の仲間に助けてもらいながら、やってるから。もらって・・・ばっかりだなって、いつも思ってるんだけど、数少ない人がそう思ってくれてて、すごく救われた。ありがたいなって。」
す「愛をもらって還すのが自然にできてるんでしょうね。いつも輝いてるって思います。」
ゆ「そんなことない、そんなことないんだけどね!」


IMG_7911.jpgす「音楽教室では、シュタイナー教育に絡めた活動をされているそうですね。」
ゆ「うちの子も含めて小さい子が、ピアノだけを楽譜を読んで小学生と同じように弾くっていうのは体に負担があって。内容としても、学校で勉強を習っている子じゃないと、ちょっと難しいかな?って思う。だからといってこどもが喜ぶようなアニメの曲を歌って時間をとるのは、私は嫌で。日常聴いて“いい音楽だな”と思っている音楽を取り入れたくて。
わらべうたや、森で教えてもらった歌を、言葉を変えたりしながら歌ってみると、こどももお母さんも真似して歌えるし、複雑な歌や長い曲ではないから、輪唱も出来ます。
あとはライヤーとかクーゲルとか、シュタイナーの楽器は、小さい音で優しい音だから、ただ触ってきれいな音とか、ただ叩いてきれいな音とかを、純粋に楽しむことができる。ピアノは、いろんなことが出来るようになって弾けるもので、好きなようにやってもいいと言っても、叩くことしかできない。ああいう小さなきれいな楽器だったら、鳴ってるだけで心地いい。そういうのを楽しむ時間にしたくて。そうしたら、お母さんとこどもたちの落ち着いた時間を過ごしてもらえるのかなと思っています。」
す「それは、週何回?」
ゆ「普通に、ピアノを習いに来る子が、毎回そういう時間を持てるようにしていて、幼稚園から小学校1年生くらいまでが一緒に、親子の時間を過ごします。」


す「12月4日のオープンデイでお聞きしたい、伝説の園長藤井さんへの質問はありますか?」
IMG_7324.jpgゆ「そうだねえ・・・聞きたいこといっぱいだよね・・・。 
今、Kちゃん(息子さん)が7歳で、最近はどんどん自分の新しい世界に旅立ってるんだなぁって思うんだけど、どこまでこちらの・・・思いを押し付けるといったら言葉は悪いけど、“こういうものなんだ”って言っていいのか?、ね。
自分で考えさせるっていうのと、好きなようにさせるっていうのって、ちょっと違うと思う。まだまだなんかちょっと言いたかったりするんだけど・・・ちょっと大きくなった子の子育ての大事なポイントとか聞けたらいいなって。

IMG_7653.jpg今年初めてKちゃんがサンタさんに『ゲームがほしい』ってお願いしたのね。今までは、バイオリンが欲しいって言えばバイオリンを、台所が欲しいって言えばこどもの台所をパパがつくってね、用意していた。ゲームは、学校のみんなが持っているから欲しくなったみたい。みんなはどうしているのかなあって。自分の決めたルールや、家族とのルールに、がまんできるようになってからにしたいって思いがある。でも、こどもを信頼することも大事だなって。何でもかんでもダメじゃなくて、ルールを作って、チャンスもあげないとなって。」

す「テレビはみてる?」
ゆ「テレビはうちにはなくって、実家にあるから、『これとこれを見たい』って撮ってもらって、見られる。私が小さいときも、その方法だったの。新聞を見て、『これを見たい』って。その代わり、朝決めてマルつけたやつしか見られない。次のも面白そうだから見るというのは、ダメだった。」
す「事前申告がされてるんですね。そういうところも、切りかえが上手なポイントなのかな。ズルズル行動しないっていう。」
ゆ「(ダラダラ)したいときはするのよ~」
す「全然想像できない」
ゆ「全然動けないわけじゃないのに、友達にお迎えお願いして30分寝るとか!(笑)アハハ」
す「あ~、お手伝いしてくれる仲間が近くにいてうらやましい。」
ゆ「本当。恵まれて。そこに甘えてしまっているんです。」
す「甘えられるのも、才能ですよね。」

ゆ「もうね、ふつう頼まないよ!っていう・・・この間も、手づくりのお弁当を幼稚園に持っていかないといけないのに曜日変更になっていたのを忘れて・・・役員で幼稚園にいたので、先生が『近くのコンビニで買ってきてもいいですし』って言われたときに、友達に電話して・・・お弁当作ってもらってきて。他の人から『普通頼まないよね』って!(笑)アハハ」

す「ゆきこさんに頼まれると嫌な感じがしないんでしょうね。頼まれても嬉しいっていう風に。」
ゆ「いやー、図々しさが、度を越してるんだと思います。フフフ。」


す「これまでのお話で伝わってくるものがたくさんあったのですが、最後に大きなテーマで・・・どんな世の中、社会になったらいいなっていう思いはありますか?
ゆ「今はこう、他人の悪いところを見つけて責めるとか、ちょっと普通と違うところを認めないっていうところをすごく感じて。うちの上の子がちょっとハンディ持ってるっていうこともあるけれども、『こういう制度はないから』とか・・・制度としては障碍者ではないけれども、社会から見ると障碍って言われたり、そういう扱いはある。その子にとっては1面だけでも、理不尽なことがたくさんあるような。違っててもいいし、弱ってる人がいたら、ちょっとこう、時間だったり気持ちだけでも余裕のある人が、フォローしていけばいいよねっていうふうにどんどんなっていくと・・・。心に余裕のある社会になるといいんじゃないかな。自分のこども達が大人になった時には、嫌な思いをしないようになってたらいいなって。

フィンランドの教育についてこの間読んで、テストのためじゃなく、宿題があると遊べないから、最低限だったり無かったりっていう中で、そうして生まれるゆとりっていいな。今の日本はやっぱり点数とってというのがベースになっている。自分が受けてきた教育とあまり変わっていない感じ。教育もそうだし、社会の中でももう少しゆとりが・・・心のゆとりがね。心の豊かさがあったらなーって、思う。

IMG_2581.JPG森の中で、“みんな大丈夫?”とか“よくできたね”、とか“気持ちいいね”とか、そういう言葉が出てくる体験をしていることって、すごい大事なんだなって思って。
言葉をかけてもらったり、思いを寄せてもらったりしたことがないことは、他人にもできないんだなって、思うのね。親からももちろん、友達からももちろん、友達のお母さんからももちろん、森に来るとあったかい言葉が自然と出てきて。自分のこどもじゃないまわりのこどもが何かできたときに、すごい懐かしい思いや、自分のこどもみたいな喜びがあったりする。

そこで感じてることが、こども達がかけてもらった言葉が、そのままその子の財産になっていくんだなーと思って。だから、もし、・・・日本の保育園幼稚園が、毎日と言わず週の半分でもこんな形になってたら・・・そのあとの、大人になった時の社会は、もっと優しくって、多様性のあるものになるんじゃないかなって。


IMG_2577.JPG自分の思いを伝えていいんだって、自然に出てくる思いを、どういう風に言葉にしたらいいのかっていうのを・・・社会人でも入社する前にそういう教育をするらしいけど、それって今までの、人生経験の中で自分で考えて出てくるところを、『こういう場合はこう』って、じゃあちょっと違う形になった時に『えっわかんないんですけど』っていうことになっちゃうから、それって、どっちも不幸。森は自然にコミュニケーションができるようになる力さえも、育ててくれるんだなって、思う。
す「自分の気持ちを、大事に信頼してて、周りにも信頼がないとできないことですよね。」
ゆ「そうね、自己肯定感は育ってるかなあって。小学校でみんながあたりまえにできてることは、まだできてなかったりするんだけど。できてないことも、『あーそっか、みんながんばったんだ!まー、こんどやればいっか!』みたいな(笑)。もう少し『僕もやんなきゃ』って焦ってくれてもいいんだけどと思うけど。ま、いっかって思えるのもいいかって。」
す「リラックスできてていいですね」
ゆ「ふふふ、森の時間は大きいなと思います。今年は、離れしまわなければならない時間もあったけど。残された幼稚園生活、また戻れることになりそうです」
す「また、おんがく部をお願いしたいです。おんがく部で習った歌がふと、洗い物をしていて出てきたりします。」
ゆ「ぜひ、お願いしたいです。そういう時間を持つと、また豊かになるかなと思うから。」



(2016.11.24)